そばについての豆知識。
今回は「生蕎麦(きそば)」と「生そば(なまそば)」の違いについて、お伝えします。
実は、「きそば」「なまそば」はそれぞれ別のものなのです。
この記事では、混同するのを避けるために「きそば」は「生蕎麦」と表記し、「なまそば」は「生そば」と表記いたします。
「生蕎麦(きそば)」とは
生蕎麦は「つなぎの小麦粉などを使用せずに、そば粉だけで作ったそばのこと」をいいます。
いわゆる「十割そば」のことを「生蕎麦」ともよびます。
そばの歴史の初期の「そば切り」は小麦粉などのつなぎとなる混ぜものは無く、そば粉だけで打たれており「生粉打ち」とも呼ばれていました。
生蕎麦の歴史
わたしたちも書籍やインターネットで得た知識ではありますが、江戸時代前期において、そばはすべて「生蕎麦」であり、小麦粉をつなぎに用いるようになったのは江戸時代中期以降のことのようです。
元来は「そば粉だけで打ったそば」「小麦粉などの混ぜものが少ないそば」を意味するものでした。しかし江戸時代中期以降、そばのつなぎをよくするために小麦粉を使用し始めたことにより、二八蕎麦が一般大衆化したようです。
その時に、高級店がつなぎのない「そば粉だけのそば」を強調するキャッチフレーズとして「生蕎麦」を使うようになったとされています。
その後、幕末頃になってくると二八蕎麦の店舗も「生蕎麦」を掲げるようになり、「生蕎麦」は十割も二八も関係なく、蕎麦を指し示すようになりました。
元来は「そば粉だけで打ったそば」とされていましたが、今は蕎麦全般を指すとも言えます。Wikipediaなどの情報サイトや、大手製粉企業のサイトでは「生蕎麦」=「そば粉だけで打ったそば」と定義づけられてはいますが、歴史の流れを見てみると、どちらが正しい意味とも言えないかもしれません。
「生そば(なまそば)」とは
「生そば」は茹でる前の生麺や、生麺・ゆで麺など水分を多く含んだ麺のことを指します。
今はこちらの表記の方が、馴染みがありますね。
「生そば」の表記は、昭和50年代あたりから登場したもののようです。
そばをお楽しみください
そばについては、研究者や通の方が残したたくさんの情報がありますが、時代に合わせた言葉の変化があり、味の変化があり、人によって好みもさまざまです。
食べる人が「美味しく召し上がっていただくこと」が、私たち「そば処やぶ」にとってはいちばん嬉しく思います。こうした豆知識と一緒にそばを楽しむ方法もありますし、自分の好みと直感で楽しむ方法もあります。
皆さまに、少しでもそばを楽しんでいただけましたら幸いです。
参考資料
こちらの情報は、下記の情報を参考にさせていただいています。
- 「蕎麦の事典」著:新島 繁、講談社学術文庫
- 「蕎麦全書」校注:新島 繁、訳解:藤村 和夫
- 「粋を食す 江戸時代の食文化」著:花房 孝典
- Wikipedia「蕎麦」