そばと薬味のおいしい関係


みなさん、そばの薬味はどんなものをお使いでしょうか?

そばの好みも人によってさまざまありますが、そばに合わせる薬味も人によって好みがさまざまです。

今回はそばと薬味の関係と、それぞれの薬味の特長について、お伝えいたします。

そばの薬味「わさび」「ねぎ」「七味唐辛子」「のり」

わさび

そばの薬味の代表的存在。
冷たいそばを頼むと、わさびが付いてくることが多いですね。
暖かいそばに入れると熱で辛味が飛んでしまうため、冷たいそばに使うのが人気です。

庶民にそばが広まった江戸時代初期には、冷たいそばが一般的でした。しかし冷蔵保存の技術がなく、傷みやすい食べ物であったため、解毒作用のある薬味が使われるようになりました。しかし、当時の冷たいそばの薬味はわさびではなく「大根おろしのしぼり汁」だったようです。

江戸時代の資料「蕎麦全書」では「辛い大根がない場合、しぼり汁の代用としてわさびを使う」と解説されていますが、徳川家康がきっかけだったとする説もあるようです。

家康は夏に食べる冷たい蕎麦に、旬ではない大根のしぼり汁を使うことを嫌っていました。ある日、駿府城の近くで栽培されていたワサビが献上され、一年中採れるワサビを冷たいそばの薬味として食べました。また、ワサビの葉は徳川家の家紋「葵」によく似ていることもあり、縁起がよいと家康はワサビを気に入り、家康の命により静岡ではワサビ作りが盛んになったという話もあります。

弊店では、本来長野のわさびの産地「安曇野」産のものを基本使用していました。現在長野のわさびが大変不作となっており、わさびの名産地である静岡のものをお入れしています。

冷たいそばに合わせるのがおすすめですが、みなさんのお好みでさまざまな食べ方を試してみると良いでしょう。

ねぎ

ねぎは冷たいそばにも暖かいそばにも使われる、こちらも薬味の代表的な存在です。
ねぎには殺菌や抗菌の効果があるとされており、雑菌の繁殖を防いでくれると言われています。また、血行を良くして、疲労物質である乳酸を分解、新陳代謝を活発にする作用もあります。

北海道や東北など東日本では白くてシャキシャキした「白ねぎ」が添えられることが多く、近畿圏・四国・九州など西日本では細かく輪切りにした緑色の「青ねぎ」が添えられることが多いです。

弊店では長野産の和ねぎを薬味としてお出ししております。

七味唐辛子

こちらもそばの薬味として、代表的なものです。わさびの代わりに七味唐辛子をつけるという方も多くいらっしゃいます。

唐辛子の辛味成分「カプサイシン」は血液の循環をよくして、体を温めてくれます。また、疲労回復や夏バテ、二日酔いにも効果的です。

昔はわさびが高価だったため、七味唐辛子の方が薬味としては一般的だったという話もあります。

暖かいそばに七味や一味を使うのが全国的にも一般的ですが、冷たいつゆに入れるとそばの甘みが引き立って、これもまたおいしいものです。

弊店では長野「善光寺」のお膝元に古くからある「八幡屋礒五郎」の七味を使っています。辛みだけではなく、香りが豊かな七味で、地元の人々も愛用する七味です。

大根おろし

「おろしそば」というメニューがあるくらい、大根とそばの相性も抜群です。
「蕎麦の事典」(新島 繁著,2011年 講談社学術文庫)では薬味御三家は「ねぎ、大根おろし、七味唐辛子」だったと紹介されています。江戸時代はそばには大根おろし汁で食べるのが一般的だったとも言われています。

 

海苔

のりの風味で香り豊かになることももちろんですが、現在は「もりそば」「ざるそば」の違いとして扱われることも多い薬味です。

もともと、もりそばに対して、上質で高級な位置づけとしてざるそばが登場しました。「もりそば」「ざるそば」をメニューとして並べたときに、違いを出す必要があり、海苔が乗っているそばを「ざるそば」として差別化しているところも多くあります。

もちろん、そばやつゆに変化を加えて、違う商品としてメニューにしている店舗もありますが、海苔は高級感を加えるための役割もあったのです。

 

その他の薬味

以下は弊店では提供はしていませんが、そばにはさまざまな楽しみ方があります。

味噌

もともと江戸時代初期にはそばつゆには味噌が使われていたそうです。長野の高遠という地域では、焼き味噌に蕎麦つゆを加えてそばにつけて食べる「高遠そば」というものもあります。

とろろ

暖かくても冷たくても、そばに合います。薬味として並ぶというよりは「とろろそば」としてお店や食卓に出てくる方が多いかもしれませんね。

みょうが

そうめんや冷や汁でお馴染みの薬味で、独特な香りがそばにマッチします。

生姜

うどんと相性の良い生姜ですが、そばに生姜という組み合わせも、いつもと変化をつけたいときに最適です。暖かいそばにも冷たいそばにも合う薬味です。

梅干し

口当たりがさっぱりし、夏の冷たいそばに合う薬味として活躍します。

オクラ

夏のぶっかけでは定番でもあります。とろろと同様にネバネバが整腸作用を促進します。

すだち

夏にさっぱりと食べたいときにおすすめの食材です。

 

そばの代表的な薬味は「わさび」「ねぎ」「七味唐辛子」「海苔」とありますが、お好みや季節に合わせて、さまざまな味や組み合わせをお楽しみください。